私は個人で歯科クリニックをしています。自由診療収入は年間1,000万円を超えるため、毎年消費税の申告をしています。2023年10月からインボイス制度が始まると、どのように対応が変わってくるのでしょうか?
毎年消費税の申告をしている方については、インボイスの登録有無によって消費税の負担額が変わるわけではないので、インボイスの登録をすることになると考えられます。
また、経費の支払先などがインボイスの発行をしているかを確認する必要があります。
インボイスの概要は、以前のコラムにてご確認ください。
消費税の申告を毎年している方は、インボイスを登録するか否かによって、消費税の納税額の計算方法が変わるわけではないので、インボイスを発行することができる事業者として登録することになるかと思います。
登録するためには、事前に国税庁に登録するための申請書を提出しなければなりません。
金属屑の買取業者からインボイスの発行を要請されるかと思いますので、金属屑の買取業者には、インボイスを発行します。
患者さんは、一般消費者でありインボイスの発行義務はないので、患者さんに対しては、インボイスの登録番号などを記載した領収書の発行は必要ありません。
万が一、患者さんからインボイスの発行をしてほしいと言われたら、随時インボイスの発行をすればいいかと思いますが、領収書をレセコンから出力している場合にはインボイスに対応していない場合が多いかと思います。
その場合はインボイス対応のレセコンを導入するか、手書きの領収書を発行する必要が出てきます。患者さんからインボイスの発行を依頼されることはほとんどないと思うので、もし発行するのであれば手書きの領収書でもいいのかな、と思います。
なお、インボイスには、今までの領収書に「インボイスの登録番号」「適用される税率」「税率ごとに区分して合計した金額」「税率ごとの消費税額」を追加して記載する必要があります。
またインボイスの登録をすると、経費の支払先がインボイスの登録をしているか否かを確認する必要があります。
概要のコラムで記載した通り、支払先がインボイス登録をしていない場合は自院で消費税分を負担することになってしまいます。
発行された領収書に誤りがある可能性もあるので、一度は国税庁のインボイス登録番号検索サイトで取引先が本当に登録されているのかを確認したほうがいいかと思います。
インボイス発行する事業者をやめようと思った際はいつでも取りやめができるので、取引先が取りやめていないかの確認も定期的に必要です。
さらには、登録番号は記載されていても「税率ごとの消費税額」など、インボイスに記載すべき内容がすべて記載されていない場合もだめなので、ちゃんとすべての内容が記載されているかも確認する必要があります。
これだけを聞くと、とても事務負担が多いと思われたかと思います。
しかし、令和5年の改正で、2年前の課税売上高が1億円以下など一定規模のクリニックの場合は、令和11年9月30日までの取引で税込み1万円未満の支払いには、インボイスをもらう必要がなくなりました。
自由診療収入などがあまり多くないクリニックでは、この改正で事務負担が大幅に軽減されます。
なお、2年前の課税売上高が5,000万円以下で簡易課税制度という、収入だけで消費税の納税額を計算する方法を採用しているクリニックでは、消費税を計算するうえで実際の経費は見ないので、インボイスを受け取る必要はありません。
よって簡易課税制度を採用している場合は、インボイス開始に伴い、事務負担が増えることはありません。
まとめると、消費税を申告する必要があるクリニックではインボイス登録をすることになるかと思います。
インボイス登録をすると、発行する立場としては金属屑の買取業者や発行を依頼した一部の患者さんに、インボイス登録番号などを記載したインボイスの発行が必要となります。
発行してもらう立場としては、通常の方法で消費税を計算する場合は、インボイスの確認作業などで事務負担が増えます。しかし、期間限定で少額の支払いについては、インボイスを発行してもらう必要はないので事務負担が軽減されます。
なお、簡易課税制度という方法で消費税を計算する場合は、インボイスを発行してもらう必要はないため、事務負担が増えることはありません。
それぞれのクリニックの状況に応じて、インボイスの対応が必要です。