役員への賞与の支給は、ルールを守らないと税金の負担が増える!?

 私は3月決算の医療法人の理事長をしています。業績が好調で、来期には自身にも賞与を支給したいと考えています。支給時期はスタッフと同じ来期の12月20日を検討していますが、支給しても問題ないでしょうか?

 理事長など役員への賞与も、一定のルールを守れば役員賞与として支給することができます。ただし、ルールを守らないと、税金の計算上、損金(※)としては認められないため、注意が必要です。

※損金とは、法人税の計算上、差し引くことができる費用や損失などのことをいいます。会計上、経費計上できたとしても、税金の計算上、損金として認められず、税金が課されるものもあります。

 役員へ賞与を支給するためには、社員総会で役員賞与の金額と支給時期を決定して、その決定に従って一定の期限内に税務署へ届出書を提出する必要があります。

 社員も兼ねていることが多い役員の賞与は、法人内部で簡単に金額を増減させ、利益調整ができてしまいます。これを防止するために、事前に賞与の内容を届出するというルールが設けられているのです。

 この届出書の提出期限は、①と②のいずれか早い日となります。

  1. 役員賞与の支給金額等を決議した社員総会の日から1か月を経過する日
  2. 会計期間開始の日から4か月を経過する日

 事前に届け出た賞与の支給額と支給日は、絶対に守らなければなりません。

 支給額が1円でも届出した金額と異なれば、支給額の全額が損金とは認められません。支給時期も届出した日と1日でもずれていれば、基本的には支給額の全額が損金とは認められません。届出した内容と相違がないように、支給してください。

 なお、業績が悪くなり、役員の賞与を支給しなかった場合は、そもそも賞与の支給はないので、損金として認められない金額はありません。

 ただし、役員賞与の不支給は、賞与をもらう権利がある役員がその請求権を辞退した、と考えられるため、賞与の支給日前に全額不支給の決議を行い、役員から辞退書等で賞与の受領辞退を明示してもらわなければなりません。

 これらの手続きを踏まないと、不支給であった場合にも、届出した支給額につき源泉徴収を行う必要があります。

 当該事例では、来期に役員賞与を支給することを検討されているため、期限までに事前に役員賞与の内容の届出をして、届出通りに支給すれば、税金の計算上、損金として認められます。

 役員の賞与を支給するにあたっては厳格なルールがあり、ルールを守らなかった場合の影響は大きいものとなります。
しかしルールをしっかりと把握し守っていれば、活用することができます。

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