医療法人設立2年目。消費税が発生するケースと発生しないケースの違いと理由とは?

 2024年4月に医療法人の設立を検討しています。個人クリニックを経営している時は、毎年自費診療収入が1,000万円を超えるため、消費税の納税をしています。医療法人を設立した場合、設立2年目は消費税を納める必要があるのでしょうか?

 はじめに、消費税は原則2年前の年間の自費診療収入や金属屑の売却収入などの合計額(以下「課税売上高」といいます)が1,000万円を超える場合、消費税を納める義務が生じます。

 ただし、法人設立後2年間は、2年前に法人が存在しておらず、もちろん課税売上高もありません。よって法人設立後、1年目・2年目は別の方法で消費税を納める必要があるか否かを判定します。

 当コラムでは、法人設立2年目の判定についてご説明します。

 法人設立2年目の場合、法人設立日から6か月間の課税売上高または同期間の給与支払額で判定します。
 上記事例の場合、2024年4月から2024年9月までの期間で判定することになります。この期間のことを特定期間といいます。

 特定期間の課税売上高及び給与支払額がいずれも1,000万円を超える場合は、2年目は消費税を納める義務が生じます。

 課税売上高と給与支払額のどちらかで判定することになるので、例えば特定期間の課税売上高が2,500万円、給与支払額が900万円だった場合、

  1. 課税売上高 :2,500万円>1,000万円
  2. 給与支払額 :900万円≦1,000万円

となるため、どちらの金額を採用するかによって消費税を納める事業者になることもできるし、消費税を納めない事業者になることもできます。

 通常は消費税を納める事業者になりたくないので、②の給与支払額を採用し、2年目も消費税を納めない、ということになる場合が多いかと思います。

 しかし、設備投資などの支払いが多く、あえて消費税を納める事業者になり消費税の申告をして、払いすぎた消費税をかえしてもらう(=還付)という場合も考えられます。

 なお、1年目が7月以下であれば、上述の方法で判定する必要はありません。

 なので、上記事例でいくと2024年10月31日までに1年目の会計期間が終了していれば、判定は不要となり、2年目の消費税を納める義務は生じないことなります。

 よって医療法人を設立する際に、あえて1年目を7か月以下になるように決算期を設定し、2年目も消費税を納めないようにすることが多いかと思います。

 医療法人設立2年目は、法人設立日から6か月間の課税売上高や給与支払額により判定します。
 1年目が7月以下であれば、2年目は消費税を納める必要はありません。

 ただし、多額の設備投資を行う場合など、払いすぎた消費税を返してもらうように、あえて消費税の申告を行う事業者とする場合も考えられます。
 あえて消費税の申告を行う事業者となる場合には、税務署に消費税の申告をします、という届出書を一定期間までに提出すれば、上記の判定に関わらず、消費税の申告を行う事業者となることもできます。

 消費税は非常にややこしいので顧問税理士とよくご相談ください。

 また、2023年10月よりインボイス制度が始まります。今後はインボイス制度も加味して、消費税の検討をしていかなくてはなりません。
 インボイス制度については、別コラムで記載させていただきます。

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