クリニックを個人開業して、順調に業績があがると、個人の税金が増えるため、顧問の税理士さんから、節税のために医療法人を作ろうと提案される先生も多いかと思います。
たしかに医療法人を設立することにより、節税になる可能性は高くメリットもありますが、法人成りをすることによるデメリットも多々あります。
医療法人設立時に法人に引き継げなかった借入金が個人に残ったことにより、医療法人設立後にこんなはずじゃなかった!と後悔する失敗事例をご紹介いたします。
個人クリニックの業績が好調で、節税の観点から数か月前に医療法人を設立された院長先生でしたが、個人の資金繰りが厳しいとのこと。
資金繰りが厳しい理由を確認したところ、毎月医療法人から受ける役員報酬から、多額の借入金返済をしていることが分かりました。
これらの借入金は、個人の住宅ローンのほか、医療法人に引き継げなかった借入金もあり、これが個人の資金繰りを圧迫していました。
資金繰りを楽にしようと役員報酬を増額しようにも、個人の納税が増えるため節税メリットの恩恵が薄れます。
また、役員報酬は基本的に年に1度の決まったタイミングでしか変更できないため、しばらくは個人の貯金を取り崩して支払うしかありませんでした。
医療法人に引き継ぐことのできる借入金は、医療法人に拠出する資産を取得するために借入れしたものでないといけません。
よって、運転資金のために借り入れた借入金は、医療法人に引き継ぐことができず、個人に残ってしまい、個人で返済していく必要があります。
また、個人に残った借入金の利息は医療法人の経費とすることもできません。
医療法人設立を検討される際に、法人に引き継ぐことはできる借入金はどれか、個人に残った借入金の返済で資金繰りを圧迫しないか鑑みる必要がありました。