中古資産の購入

 私は3月決算の医療法人の理事長をしています。
今期は利益が多額に出そうなので、少しでも利益を抑えるために、ちょうど買い換えようとしていた訪問歯科診療のために乗る車を、今年の2月に300万円で購入し、乗り始めました。
4年落ち以上の中古車だと一気に経費計上できると聞いたことがあり、この車は6年落ちの中古車なので300万円全額を今期の経費に計上できますよね?

回答

 4年落ちの中古車だからといって、今期に300万円全額を経費計上することはできません。当該事例では1つ大きなミスがあります。

 そもそもなぜ4年落ちだと一気に経費計上できるという情報が広まっているかというと、減価償却という会計上のルールがあるためです。

 減価償却とは、会社や個人事業主の方が、車や設備などの高額な資産を購入した場合には、購入年度に一気に経費計上するのではなく、決められた年数(以下、「耐用年数」といいます)で、購入金額をちょっとずつ経費計上しなければならないというものです。

 新車である普通車の場合は6年かけて経費計上することになります。

 詳しい計算方法は割愛しますが、中古車の場合は、新品の時から中古車を購入するまでの経過年数に応じて耐用年数が短くなります。
 一定の計算方法で算出した年数が2年以下の場合、減価償却費として1年で全額経費計上ができます。
 1年で全額経費計上できるのが、中古車の場合、4年落ち以上のものっていうわけです。

 余談ですが、医療法人で減価償却の計算方法を変更します、と税務署に届出をしていない場合は、4年落ち以上の中古車は1年で全額経費計上できます。

 個人事業主の先生の場合は、同じ4年落ち以上の中古車を購入しても、1年で全額経費計上することはできません。

 これは会社と個人事業主で減価償却費を計算する方法が異なるためです。

 個人事業主の先生が、同条件で1年で全額計上するためには、減価償却の計算方法を所定の方法に変更する旨の届出書を税務署に提出する必要があります。

 早めに経費計上したい場合は、事前に顧問税理士にご相談してくださいね。

 話は戻りますが、たしかに、4年落ち以上の中古車だと1年で経費計上できますが、ここで忘れてはいけないのは、使用期間に応じて月数案分が必要であるということです。

 当該事例の場合、中古車を購入し乗り始めたのが2月で、決算期が3月なので、2か月分のみ当期の経費となります。
 上記事例で具合的に計算すると、300万円×2か月 / 12か月 = 50万円 だけが当期の経費となるのです。
もちろん残りの250万円は翌期の経費となります。

 細かいことをいうと、300万円がすべて減価償却の対象となるわけではありません。車の購入明細を見ていただいたらわかりますが、車の重量税や検査代行費用などの一定の名目に振り分けられているものは、購入時に一気に経費計上できます。なので実際には50万よりも多く、当期に経費計上することになります。

 車や設備などの高額な資産を購入したときは、基本的には購入時に一気に経費計上ができず、また月数案分が必要となります。

 少しでも当期の経費を増やしたいのであれば、できるだけ早めに資産を買うなどの対応が必要となります。 

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