Q.医療法人の理事長をしています。また、医療法人とは何の取引もない株式会社の役員にもなっています。
近い将来に、いずれの役員も退任し、両社からそれぞれ退職金を支給してもらう予定でいます。退職金の受給にあたって税務上何か注意すべき点はありますか?
なお、両社とも現時点で20年間役員として貢献してきており、各社から数千万円の退職金を受け取る見込みです。
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A.退職金を一括で受け取る際は、後述する退職所得控除というもので税金が低く抑えられます。
しかし、5年以内に退職金を2回受けると、退職所得控除の恩恵を最大限に受け取ることができず、税金負担が増えてしまう可能性があります。
もし可能であれば、両社の退任の時期を5年以上あけるなどの検討をされたほうがいいかと思います。
退職金にかかる税金の計算方法
下記の方法で算定した所得を基に税金を計算します。
退職所得=(退職金-退職所得控除)×1/2
退職所得控除とは
退職金にかかる税金を算定する際に必要な退職所得控除は、勤続年数に応じ計算されます。
勤続年数(A) 退職所得控除の額
20年以下 40万円×A
20年超 800万円+70万円×(A-20年)
退職所得控除の5年ルール
しかし、退職金を受け取ってから5年以内に、再び退職金を受け取る場合は、勤続年数の重複期間を除いて退職所得控除が計算されます。
例えば
医療法人の在任期間:2000年4月~2024年3月 退職金5,000万円
株式会社の在任期間:2000年4月~2026年3月 退職金2,000万円 とすると、
各社での退職所得控除は
医療法人 800万円+70万円×(24年-20年)=1,080万円
株式会社 40万円×2年(※)=80万円 となります。
※2000年4月~2024年3月は在任期間が重複しているため、重複期間を除外して算定
2回目の退職金受給を5年ずらすことも検討しましょう
上記の例で、株式会社の退任時期を2030年3月にした場合の株式会社の退職所得控除は
株式会社 800万円+70万円×(30年-20年)=1,500万円 となり
より税金の負担を抑えることができます。
退職金の額が退職所得控除の範囲内などであればいいのですが、退職金が多く、退職時の税金負担が多くなる見込みの場合は、本来の退職所得控除を最大限に利用するために退職時期を検討されることをおすすめします。