今回は、親御さんが所有する物件を使用してクリニックをオープンする場合について、開設届を準備する際、予め知っておいていただきたい手続き上のポイントをいくつかお届けしたいと思います。
なお、今回は、個人開設を前提にしています。法人開設については、異なる部分もございますので、ご注意いただきたいと思います。
物件の貸し借りは、口約束だけでも良いの?
新しくクリニックをオープンしようとしたとき、テナント料のような固定費はなるべく抑えたいと考える方は多いと思います。
新しくクリニックを開設しようとする先生の親御さんが、クリニックを開設するのに適した物件を所有しているような場合、その物件を使用して、クリニックをオープンしたいと考えることもあるでしょう。
開設届を提出する際には、まず、当該クリニックの土地および建物の登記事項証明書を添付するように求められていますが、賃借により開設する場合には、さらに、土地または建物の賃貸借契約書の写しを添付する必要があります。
この点、親と子という近い関係ですと、「クリニックで使いたいから貸して」「いいよ」というような簡単な口約束で済ませてしまうこともあるように思います。
ちゃんと了解をもらっているから書類がなくたって良いじゃないかと言いたくなりますが、添付書類として提出することが求められていますので、少し面倒でも賃貸借契約書を作成していただく必要があります。
これは、役所としては、クリニックをオープンするために、書類上しっかりとした権利関係を証明して欲しいと考えているためです。
転貸借の場合も同じです。
賃貸人から賃借人、転借人まで途切れることなく権利関係を証明できる書類を準備されると良いでしょう。
何事も口約束だけで済ませると、後々トラブルになることは少なからずあります。
多少手間はかかりますが、書類上明らかにしておくのは、クリニックを開設する場合に限らず気をつけたい点です。
建物の一室だけ借りるのに土地についての書類も必要なの?
先ほど、開設届を提出する際は、当該クリニックの土地および建物の登記事項証明書が必要になるとお話ししました。
この点、クリニックが一戸建てかどうかで準備する書類が異なりますので、ご注意していただきたいと思います。
土地の登記事項証明書が必要なのは、新しく開設するクリニックが一戸建ての場合です。
これに対して、建物の登記事項証明書は、全てのクリニックで必要になります。
一戸建てでもビルの一室でも必要になるということですね。
今回のように、ビルの一室を借りるような、建物の一部分だけを借りるような場合は、通常はこちらのケースの方が多いかと思いますが、必要になるのは、建物の登記事項証明書と建物の賃貸借契約書の写しになります。
手続き上の細かな点ではありますが、必ず準備しなければならないことですので、ご注意いただければと思います。
今回は、開設届を準備する際に、予め知っておいていただきたい手続き上のポイントをいくつかお届けしてきました。
書類の細かな運用については、役所ごと異なる場合もございますので、予め管轄の役所にご確認の上ご準備していただくことをお勧めします。