両親が医療法人で給与をもらっていると、年金額が減額または支給されなくなる可能性があることを、以前のブログでお伝えさせていただきました。
これはご両親に限らず、院長自身にも当てはまることです。今回は院長の年金受給が始まった場合についてお伝えさせていただきます。
院長の役員報酬を下げた場合のリスクとは?
院長の年金受給が始まった場合、年金額を満額もらうために、役員報酬の額を調整することをまず考えられるかと思います。
しかし年金を満額もらうためには、月給と直近1年の賞与を12で割った金額と、月額厚生年金の金額の合計額を48万円以下に抑えなければなりません。
そうすると、月額の役員報酬額が低くなるのですが、役員報酬が低いまま医療法人を退任されることになった場合、税務上退職金として認められる金額が小さくなり、多額の退職金をもらえない、というリスクが出てきます。
税務上認められる退職金の上限額は、下記の方法で計算することが一般的です。
最終報酬月額×在任年数×功績倍率
細かい説明は今回省略しますが、この方法を用いると退任時の役員報酬額を基に退職金の上限額を計算することになります。
実務上は退任時の役員報酬額だけをもって上限額を計算するわけではないのですが、目安となる金額ではあります。
医療法人を退任する時に、多額の退職金をもらうことを見越して法人に内部留保をしていた場合、年金を満額もらうがために退職金の額が減り、退職時にこんなはずではなかった、ということにはならないようにご注意いただければと思います。
個人成りをすると年金を満額もらえる?
年金の減額や支給停止は、厚生年金に加入して働いている場合だけが対象となります。厚生年金に加入して働くということは、会社や医療法人で給与や役員報酬をもらっている場合です。
もし個人開業医に戻った(個人成りした)場合には、厚生年金に加入して働いてはいないので、いくら稼いでいても年金を減らされることはありません。
これだけをきくと、個人成りしたほうがいいかもしれないと思われるかもしれませんが、個人成りには、さまざまなメリット・デメリットがありますので、それらを総合的に勘案したうえで、個人成りを検討する必要があります。
また、個人成りをするにあたって、医療法人を解散させることになるのですが、医療法人を解散させたうえで個人開業医に戻ることはとても難しいです。
しかし絶対に不可能ということではないので、医療法人の解散業務を何件もされている専門家にご相談いただければと思います。