長年事業を休止していた会社を復活しようと思うけど、以前の申告書がない。このまま申告できないの?

 私は個人で歯科クリニックをしています。5年前に当時の顧問税理士のすすめで、いわゆるMS法人をつくったのですが、活用余地がなかったため、最初の1年間だけ申告をして、そのあとはずっと申告をしていません。この度、MS法人で事業を再開したいと思うのですが、1年目の確定申告書を紛失してしまい、今期の申告ができません。どうしたらいいのでしょうか?

 本来は事業を休止していても、毎年税務署へは申告書を提出しなければなりません。現実は、会社の動きが全くなく、申告をしなくても実害は少ないため、休眠中の申告をされていない会社が多いかと思います。

 なお、会社が2期連続で申告書を提出していない場合は、様々な特典を受けることができる青色申告を取消しされてしまいます。

 もし事業を再開する際に、青色申告が取消しされていた場合は、青色申告を行いますという申請書を再度税務署に提出する必要があります。

 会社の確定申告書を作成するためには、基本的に直前に作成した申告書の数値を確認する必要があります。

 数年前に提出した申告書を、紛失してしまっている場合は、過去に申告書を提出した税務署に所定の手続きをすると、過去の申告書を確認することができます。

 会社の過去の申告書を確認する方法としては2つあります。

 1つめの方法は、その会社の社長や代理人が郵送や申告書を提出した税務署の窓口において、過去の申告書の控えがほしいという開示請求をすれば、申告書の控えを入手できるというものです。

 しかし、申告書の控えを受け取るまでに原則として30日以内の相当の期間を要するため、早く過去の申告書を確認したい場合は、2つめの閲覧申請という方法をとることが多いかと思います。

 閲覧申請とは、文字通り、申告書を見る(閲覧する)ことがだけできるもので、1つめの開示請求のように、申告書の控えをもらえるわけではありません。

 しかし、申告書を閲覧する際には、メモを撮ったり、写真撮影をすることができます。過去の申告書を確認したいだけなら、写真撮影できれば十分かと思います。

 閲覧申請をするためには、会社の社長や代理人が、申告書を提出した税務署の窓口において、過去の申告書を閲覧したいという申請書を提出すれば、当日その場で申告書を閲覧することができます。

 税理士や会社の従業員などの代理人が閲覧をする場合には、申請者の本人確認書類のほかに委任状が必要で、会社の実印の押印と申請日前30日以内に発行された印鑑登録証明書の提出も必要となります。

 ちなみに令和2年分以降の個人の所得税申告書等の場合は、マイナンバーカードを用いて、過去の申告書をPDFにて入手する方法もあります。

 今回のコラムをまとめると、長年事業を休止しており申告をしていなかったMS法人がある場合には、最後に提出した過去の申告書の確認が必要となります。 

会社の過去の申告書を確認するためには、申告書の控えがもらえる開示請求と、即日申告書を閲覧できる閲覧申請の2つの方法があります。

 開示請求で控えを受け取るまでには相当の期間がかかりますし、閲覧申請をする場合も、税務署の窓口に行ったり、代理人に閲覧してもらうとしても会社の印鑑登録証明書が必要であったりと、何かと時間を要します。

 事業を再開し、申告書を紛失していることが発覚した際は、早めに対応されたほうがいいかと思います。

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