自費診療収入が年間5,000万円あるクリニックを今年の4月に法人化しましたが、決算期についてはよく考えず、4月~3月と設定しました。
1期目は消費税の納税は免除されましたが、2期目は約250万円を納税することになってしまいました。院長先生はてっきり2期目も免税と思っていたのですが、そうなりませんでした。
よく言われるのは、「法人成りすると最長2期は消費税納税が免除される」というものですが、ここで消費税納税の判定について、少しお伝えさせていただきます。
まず、原則として2期前の課税売上(自費診療収入や物販収入、金属売却収入などが該当し、社会保険診療収入は課税売上とはなりません)が1,000万円以下であれば、消費税の納税義務は原則として発生しません。医療法人を新たに設立した場合には、そもそも2期前が存在しないので、2期目は別の方法で消費税を納める必要があるか否かを判定します。
1期目については次のステップを考慮することなく、基本的には消費税免税となります。
法人化1期目上半期の課税売上高が1,000万円超の場合には、2期目は課税の対象
次のステップの消費税の納税の義務の判定では、2期目は法人設立日から6か月間の課税売上高又は給与支払額が1,000万円を超えているかで判断します。
今回の失敗事例では、設立1期目の4月から9月までの課税売上高及び給与支払額が1,000万円を超えたことにより、2期目は消費税の納税義務が発生してしまいました。
法人化1期目が7か月以下であれば、2期目は課税されない
課税売上高も給与支払額も上半期で1,000万円を超えるのであれば、2期目は消費税を払うことが必須なのでは、と思われた方がいらっしゃるかもしれませんが、2期目の消費税の納税を回避できる可能性がある方法があります。それは、1期目を7か月以下にするということです。
1期目の期間を7か月以下にすれば、「法人化1期目の上半期で1,000万円超の課税売上があれば、2期目は課税される」の項は、適用除外となります。法人は決算期を自由に決められますので、1期目を7か月以下にすることで、2期目も消費税免税にすることが可能になり、このような失敗を防ぐこともできます。
法人成りでも決算期を工夫すれば「概算経費」は使える
決算期の設定にあたり、もう1つ節税ができる可能性があった内容についてご紹介します。院長先生の中には、いわゆる「概算経費の特例」は、個人クリニックにしか適用されないと思っていらっしゃる方も多いと思います。
当該特例は医療法人にも一定の要件を満たせば、適用することができます。
収入面での要件は個人クリニックと同様に、社会保険診療収入が5,000万円以下、総収入金額が7,000万円以下の場合です。1期目の収入を概算経費が使えるように決算期を工夫すれば、概算経費の特例を使え、節税の大きな施策になった可能性があります。